2017年とは何だったのか

気がついたら2017年ももう終わろうとしています。1年間、ずいぶん自分の意図とは違うことをやっていたような気がしていて、違和感の正体を探る意味でも振り返りが必要であるように思いました。

Xamarin系同人誌(と商業出版)

自分でも振り返っていて驚いたのですが、技術書典(2)の開催に合わせて自分でXamarin同人誌をやろう、と言い出したのは今年の初頭でした。2回(超を入れたら3回)の技術書典に合わせて、幸いにも延べ10人ほどの執筆者に集まっていただいて、Essential Xamarin 陰/陽、Extensive Xamarinの3冊を出すことが出来ました。

特に当時まだXamarin本インフレ(!)が起きていなかった頃に頒布したEssential Xamarinは大成功で、さらにインプレスR&Dさん経由で商業出版のかたちでもリリースされ、達人出版会さんでも購入していただけるようになりました。実は技術書典3で出したExtensive Xamarinも同様に商業化の作業が進行しています。正式に決まったらまた告知するつもりです。

どちらの書籍も、同時並行で同人誌版が販売されている状態で、実際技術書典3ではブースで商業版も紹介しているにもかかわらず、同人誌版がある程度売れていました。Essential Xamarinは超技術書典に合わせてかなり多く刷ってあり(超書典は参加者が同人誌を見に来たイベントではなかったので単に売れなかったわけです)、Extensive XamarinはXamarin本インフレの渦中で頒布したこともあって前回ほど売れていないので(印刷代がぎりぎり回収できていないライン)、在庫が豊富にある状態です。

xamaritans.booth.pm

基本的にこの活動は赤字前提で進めているのですが、今のところ割ともったいないなーと思っているのが輸送費で、イベントで段ボールふた箱を往復すると数千円かかってしまうので、ちゃんと数を調整しないとなあと思うところです。赤字前提と言っていますが、コストは予測できている範囲ではそれなりに考えていて(印刷所の早割が使えるように締切も設定してあるし…!)、まあ赤字になっていたのは知識・経験不足ゆえですね。

頒布数については、商業版がどれくらい売れているのか、まだ数字を受け取っていないのでわからないのですが、同人版が余っている中で商業化もするという、販売戦略としては悪手を繰り返しているので(商業化とくにオンデマンド出版に関しては、プロフェッショナルの編集が入るというのと著者を商業プロデュースできるという以外のメリットは無いです)、これはアンチパターンなので真似しないほうがいいと思います。利益を出す目的で活動をしたいなら、原稿料をもらえるオンライン記事でも書いていたほうが良いでしょう。

わたしの場合さらに特別な事情として、技術書典当日はイベント本体の運営側スタッフとして稼働しないといけないこともあって、ブースに来ていただいたお客さんと話をする機会が無いんですよね(そこはサークルでお手伝いいただいた共著者他の皆さんに助けていただいています)。来年4/22には技術書典4が開催されますが、どう対応するかまだ決めかねているところです。

Xamarin.Forms訳本と監訳読書会

今年一番自分のリソースを吸い取られたのがこの作業でした。昨年の後半から取り掛かっていたことを考えると、たかだか1600ページ程度(!)の本にとんでもない時間がかかっていますね…(後編が未だに出ていないのはそれなりの理由がありますが、監訳作業自体は9月にはほぼ終わっています)。監訳作業と並行して「監訳読書会」を行ったのが、特筆すべき活動だったと思います。

監訳読書会は、開催して良かったと思っています。毎回10人max程度で募集して、5人以下で進めたり10人を超えたりもたまにありましたが、きちんと議論できる場面が多々あり、かなり読み込んでコメントしてくださった方も数名いらっしゃったので、とても助かりました。

監訳読書会にはさらにチャレンジがあって、原則としてさまざまな勉強会会場としてオフィス等にお邪魔させていただいて開催する、というルールを自らに課していました(上巻と下巻それぞれについてなので、上巻でも下巻でも会場に使わせていただいた会社さんはいくつかあります)。これは特定企業と癒着するようなXamarinのPR活動にならないよう気をつけてのことです。ただ、この縛りは割と厳しくて、毎回どこにしよう…と悩まされる問題でした。幸い多くの方から「うちを使ってもらってかまわない」というお申し出をいただいたので、開催に困るということにはなりませんでした。後半は何度か貸会議室を使っていたのですが、「早く決めないと来週開催できない…! 開催場所で迷って時間を浪費していられない…! 自分で会議室を借り早く募集しよう…!」となっていたためです。

また、勉強会を開催すること自体の負荷とは別に、毎回日経BPさんから訳本の草稿を印刷していただいて送っていただいていたのですが、これが膨大な紙の量になっていて(1000ページ弱の本を10人分刷ることを考えてみて下さい)、これを印刷して送っていただくというのはけっこうな労苦とコストだったはずです。可能なら電子データで進めたいところですが、未出版の本で出版社から見たら得体のしれない参加者に配布となると、なかなか難しいところでしょう。

監訳作業自体には、藤原さん(@yfakariya)に加えて途中から猪股さん(@matarillo)にも参加していただいて、後半特になかなか動けなかったわたしの手が及ばなかった部分を多大に助けていただきました。監訳メンバーとしては外れていますが、田淵さん(@ytabuchi)にも勉強会の開催などでお助けいただきました。

この本に関する詳しい報告は、下巻が出たらまた改めて出そうと思います。いろいろ明らかにしてかなければならない話もあります。

勉強会等のセッション登壇

今年は前年に「しゃべりすぎた」と思っていたこともあって、あまり勉強会に出てしゃべることはしない予定だったのですが、結果的に4回しゃべっていました。

Xamarinを支える技術2017 - これはde:codeという日本マイクロソフト(そろそろ半年くらい出社していない)のカンファレンスの一室で行われたチョークトークとは名ばかり()のセッションだったのですが、これまでmonoのランタイムにきちんとフォーカスを当てた話をしてこなかったので、Xamarin製品に使われている技術がどういう歴史を経て実現できたのか(インタープリタJIT、AOT)、これからどういう展開が期待できるのか(特にwasmまわりなど)、といった話をしました。これは割とアリだったかなと思っています。有償イベントだし社員としてしゃべるセッションでもあったので、ちゃんと前向き()な話にして、それなりにストーリーを用意していった記憶がそこはかとなくあります(チョークトークとは何だったのか…)

Generics on Xamarin products - 6月のジェネリクス勉強会、アツかったですね。クロスボーダーな勉強会で、Xamarinにもいろんな印象をもって参加してきた人が多かったはずで、きちんといろんな言語のバックグラウンドの人に価値のある話を提供できるようハイリョしながら(ホントか?)今年一番気合を入れて用意したのですが、.NETクラスタ以外から「面白かった」という反応が得られたのが嬉しかったですね。この時はランタイムのコードの細かいところまで読みながら資料を書いたので、自分でもめっさ勉強になりました。

シンガポールのmonkeyfestは主にひらのさんと観光に行ってきましたという感じですね。無事海外セッション登壇デビューできてナニヨリだと思いました(!) わたしは台湾COSCUPやMS台湾のカンファレンス以来でちょくちょく英語でしゃべっていたので、まあちょっとひさしぶりかな?という感じでした。内容も昔の仕事プラスちょこっと今の仕事という感じでライトだったし。イベント自体は…まあ技術指向のイベントにならない限り、二度と行かないと思いました。

名古屋ではEmbeddinator-4000の話をシュッとする予定だったのですが、時間が余っていたということもあって結果的にだらだらと説明してしまったので、来年DroidKaigiで最新情報に合わせてシュッとした話をしようと思います。客層が全然違うので、内容はだいぶ違うものになると思います。名古屋の方とお話できたのは良い機会でしたね。(12月にも行ったのですが、即日帰らないといけなくてちと残念でした。)

2018年に向けて

2017年は(主に米国の事情を見つつ)全世界的に高潔に生きようとする者を嘲笑するような1年だったと思いますが、なんとか人としての道を違えずに、筋を通して生きて来られたと思います。

2017年はまわりに無職が増えて(まあ摩擦失業が大半ですが)、わたしもはよ引退したいと愚痴りながら過ごす1年だったのですが、来年こそはできるだろうか、と考えながら過ごすことになると思います。年金暮らししたいなあ。(できません)

引退前にいろいろ自分だけが知っていて伝えるべきことを、きちんと伝えていかないとなあ、と思うのですが、そのためにリソースを費やしていると、次に向けて本来自分が行うべき活動ができなくなってしまうというジレンマがありますね。

いずれにしろ、来年は主軸を音楽ソフトにシフトしていくつもりです(毎年言っている気がする)。何だかんだで素人ですし、目立たない活動になっていくかなと期待しています。技術書典もできればそっちの方向で出していきたいと思っています。今のサークルというか既刊をどうするかというのが当面の問題ですね。

そんなわけで来年もどうぞよろしく。