.NET Fringe Japan 2016が見せた「オープンな.NET」という世界

本当はこのイベントが決まって正式に公開された時に告知するつもりだったのだけど、ちょっと他のこと(主に前回書いたcomcampの件)で待ちに入っているうちに定員をあっさり超えてしまって、またその機会を逃してしまって忸怩たるものがあるのだけど*1、ともあれ、昨日無事.NET Fringe 2016というイベントをみんなで開催した。

dotnetfringe-japan.connpass.com

"Fringe" とは「非主流派」のような意味の語句で、わたしはそれを「異端」と呼んでいた。本家とは実のところ一度しか話していないのだけど、.NETのイベントではあるが、なるべくMicrosoftべったりにならず、独立したイベントとして開催したい、という趣旨だった。日本ではそこまで独立しなくてもいいかな?という見方が(わたしも含めて)大勢だったけど、結果的に会場もドワンゴのオフィスをお借りしてニコ生で流すというやり方になった。

いろいろ問題はあったかもしれないけど(スライドの字が見えなかったりとか)、内容としては大成功だったと思う。わたしの中では、今年一番の刺激的なカンファレンスになった。会場でも数多くのコメントが見られた。

.NET Fringe Japan 2016 (ドワンゴ・松竹スクエア) - Togetterまとめ

.NET Fringe Japanでは「オープンソースになった.NETテクノロジーではこんなことが出来るんだ!」という強いメッセージを発信できたのではないかと思う(いや、そこまで意図して開催したわけじゃないけど、結果的に)。roslynを通じてC#コンパイラや言語仕様を拡張するには具体的にどうすればいいか(何をすべきか、すべきでないか)、という内容のセッションがあった。coreclrのソースコードをハックして、独自のIL opcodeを定義するにはどうすればいいか、具体的に実践してみせたセッションがあった。クロスプラットフォームの.NETライブラリをどう開発するのか語るセッションがあれば、その具体的な仕組みをdotnet(コマンド)のソースコードから解明するセッションもあった。発表者がナチュラルに.NET Coreのソースコードに踏み込んで紹介していく風景が、そこにはあった。

Jonathan Zittrainは、Future of the Internet (and how to stop it)の中で、ユーザーに多大な可能性と創造力をもたらしたApple IIを(ユーザーにはAppleが望んだことしか出来ないiPhoneと対比して) "generative technology" と表現した*2。.NET Coreはまさにこのgenerative technologyである、と言って良いんじゃないかと思う。.NET技術を消費し、その上に乗っかるだけではなく、その土台そのものに再生産を加える(そのために採ると有益そうな指針)など、そんな話がたくさん聞けた1日だった。

わたしも「Monoならオープンソースなんだからこんなことが出来るんだよ」みたいな話を(これまで)ずっとしてきたわけで、.NET Coreが(日本でも)そこまで到達したと思うとうれしみがある。(今回やったXamarinのソースを追っかける話は、他の人たちほど深入りした内容ではなかったけど、似たような話はある程度はできるので、似たような機会があればお話ししたい。)

まあ、それはあくまでわたしの感想であって、今回は主に濃密なセッションを10時間近くぶっ通しで続けた、というところが突出していたと思う。これだけのスピーカーに集まっていただけたのはとても運が(あるいは日頃の行いが)良かったと思う。

今回のイベントをだいたい仕切ってきた鈴木さん (@yukitos) は、来年にも第2回を開催したいと宣っているので、今回楽しめたという皆さんは楽しみにお待ちいただければと思う。手伝ってくれるという人も募集しているので、もし興味があれば、gitterチャネルで声をかけていただいて、みんなでうまいこと楽にやっていけたらと思う。

それではまた次回をお楽しみに。

*1:「告知する」とまで書いていたのに…(__;

*2:日本語訳では「生み出す力を持つ肥沃な技術」と訳されているのだけど、長ったらしいので原文から引っ張ってきた。