2015年の終わりに感謝する作品集

今年こそクリスマスの朝に間に合わせようと思い、しばしば年末まで引っ張っていた「今年出会ったすげー作品に感謝」の2015年版をon timeに書き上げました。例によって「今年出た」作品には限りません。わたしが今年発見した作品が対象です。

2014 2013 2012

watoさんのピアノ作品

まずは理屈抜きでハマった2曲から。最初はVocaloid曲をピアノアレンジした作品。この種の作品が原曲を超えて響いてくることはなかなかないと思うのですが、そういう懸念(?)とは完全に無縁の1曲でした(まあ原曲は全然知らなかったのですが)。

次は、アレンジ/作曲の立場が代わり、「歌ってみた」の元ネタがピアノ曲、です。「歌ってみた」を色々漁るようになったのは一昨年あたりからだったと思いますが、今年最も多く聴いていたのはコレです。コンテンツツリーを辿って、50曲を超える「歌ってみた」の大半を聴いたと思いますが、これが一番自分の好みに合っていたと思います。(わたしの場合、ボカロ自体には思い入れがほぼ皆無なので、気になったボカロ曲があると、まずコンテンツツリーを見て、好みに合う「歌ってみた」動画を探します。)

純粋に感覚的な好みでしかなく、あれこれ書けることはないのですが、どちらも、発見してからほぼ毎日聴いていて、わたしの穏和な日常の源泉でもあったと言えるでしょう。

暗鳴ニュイ

実のところつい一昨日発掘したばかりなのですが、こちらは音楽というよりUTAU音源として衝撃を受けたものでした。とりあえずこちらから:


《Anna Nyui candyVCV》FREELY TOMORROW《New VoiceBank》

曲自体は、2011年に初音ミクの神調教で話題になったやつ、のカバーですが、何がすごいかって、UTAUの特性を活かして、独自の「特殊音素」をいくつも録音した音源を作成・公開していて、この曲自体は、それ自体デモのひとつに過ぎない(!?)ところです。 動画の中で説明されていますが、喉切り母音連続音、長音母音、長子音CVVC、語尾息、特殊語尾息、喉きり語尾、舌きり語尾、といった、人間の歌唱において自然に出る(とされる)特徴のバリエーションをもつ原音を録音しているわけで、それだけでもかなりの作業量になりそうな気がします。(わたしは自分ではやったことないから本当のところは分からないわけですが、周りには録音作業をやっているグループもあるので、そこから類推するとやはり大変そう…) 詳しくは動画の中で解説されているので、ぜひ見てみていただきたいと思います。他の曲の調教解説も面白いです。

今のは連続音の音源を使った例ですが、次のCVVCのサンプルはもっとすごい。


《Anna Nyui》文学者の恋文 The Writer's Love Letter《UTAU cover》

典型的な「神調教」動画で感じるような「人間が歌っているみたい」とは性質が違う。まるで人間が感情を込めて歌っているように聞こえる。「ボカロ曲なんて『歌ってみた』で人間が情感を込めて歌ったものの魅力には絶対かなわん」というわたしの固定観念をあっさり飛び越えていった1曲です。そうか、情感はプログラムできるのか。ETMLを使わなくても。人間たるわれわれにはクオリアしか残されていないのか…

戯言はどうでもいいとして、音源を自力で作りこんでプログラマブルに表現力を広めていくというこのプロジェクトは、エンジニア的に大変魅力的です。音源ドライバやコンパイラを自作していた20世紀のコンピューター作曲家たちを見ているかのような気持ちになりました。

(まあ、あとこの1曲については、原曲の完成度が高いのも、繰り返し聴ける大きな要因だと思います。)

あと、音源だけでもすごいのに、このキャラクターコンテンツを全部1人で作られているっぽいの、本当にすごい。ルネサンス期万能主義の芸術家かよ!みたいな。

東京ザナドゥ

毎度Falcomのゲームなので、まあいつも通り遊ぼう、程度のつもりで始めたのですが…かなりしてやられた作品でした。このゲームの根幹にあるのは「立川の町おこし」なんですね。falcomはずっと本社を立川に構えている会社なので、思い入れがあるのでしょう。作中には、冒頭の立川駅の風景に始まり、「地元を知っていれば分かる」感じのシーンがたくさん登場します。作中のvenue紹介も(それぞれはほぼ現実には正確には存在しないものなのですが)いちいちそれぞれの魅力を伝えてくるようなテキストになっているんですね。エンディング画面に、全然本編で登場しなかった花火の絵まで出してくる辺り(リアルでは毎年昭和記念公園でやっているやつですね)、本当はもっと出したいものがあったのかもな、と思わせてくれます。(まあシネマシティは出てきませんでしたがw)

それでわたし自身も、あの近辺の学校に通っていたので、立川にはけっこう思い入れがあるのです。覚えている場所が出てくるたびに、ぉぉ、と思いながら進めていたものでした。間が悪いことに、その時は台湾で暮らしていた頃だったので、「もう早く東京に帰って立川を見に行きたい」と思う一方でした。それで結局台湾の居場所を引き払って東京に戻ってきてしまったわけで、たいへん罪作りな作品だったと思います(!) まあその、"立川は東京に含まれるのか問題"が無くもないですが

あと音楽もいいものが多かったと思います(曲数が抑えられていて = 粗製濫造になっていなくて良かった)し、それらの使われ方が上手かったですね。2015年にもなって未だにOPN由来っぽい音色をBGMに使っている辺り、変わらんなあと思いました。

また来年

今年は紹介数が控え目になりましたが、歌モノの動画はニコ動のマイリストだけでも30本くらい新しく追加されていて、それにyoutubeとかのものも加えて全部書いていたらキリがないので、これくらいにしておきたいと思います。

また来年も血沸き肉踊る楽しい作品に出会えることを楽しみにしています。